2021 OHArchitecture

松原町のホテル

Project

現代に再生する京町屋

八坂神社にほど近い京町家を、一棟貸しのホテルとして改修するプロジェクトです。

解体してみるとそこには当時の古い躯体が現れ、京町家の特徴でもある火袋に入る光が、暗い空間を穏やかに照らしていました。しかし、ただそれを呼び起こすのではなく、変わりゆく現代に合った形で、この火袋を「再生」できないかと考えたのです。

 

玄関から奥に続く土間を通り庭といい、一番奥に炊事場があります。
この炊事場で起こる火事の火や、煙を閉じ込めるために作られた吹き抜けが、火袋です。
しかし現代では、これらの機能は機械が取って代わるようになり、さらに生活スタイルの変化によって、オープンな活動はほとんどがLDKに集約され、プライベートな活動のみが各部屋に閉じ込められるようになりました。そのため私たちはこの火袋を、LDKとして現代の解釈で「再生」することにしました。
そこはゲストたちが時間を共有する空間であり、高い吹き抜けは穏やかな自然光を取り込みます。
そして同時に、各諸室は障子で覆うように区切ることで、LDKと完全に分断するのではなく、光や音でその気配を感じられるようになりました。

 

時代と共に生活は日々変化してきましたが、過去も現在も、すべてが関わり合っています。
過去を受け入れながら再生されることで、京町家は受け継がれてゆくのだと考えます。

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2019.08.16

壁の記憶

解体が始まり、大正からその姿を残していた壁がようやく見えました。

幾たびにも補修した継ぎ目がありそれぞれ質感も違いましたが、昔から引き継がれた記憶を色濃く表しています。

お施主さまとも話し合った結果、この壁は見せていくことにしました。

新築にはない、引き継いでいくからこその表情が、ホテルに滞在するお客様にも楽しんでいただけるといいなと思います。